中央銀行デジタル通貨、
いわゆるCBDCに関しては、
導入国の増加とともに社会的議論も
活発になってきました。
現金に代わる新たな国家通貨として
期待される一方で、
その本質と影響を理解せずに
賛否を語るのは早計です。
ここではCBDCのメリットとデメリットを
構造的に整理します。
まず、CBDCの主なメリットは以下の通りです。
第一に「金融インフラの効率化」です。
CBDCは即時決済や24時間送金を可能にし、
個人間送金や公共給付の仕組みを簡素化します。
民間の銀行ネットワークを介さずとも
取引が成立するため、
送金コストや時間が大幅に削減されます。
第二に「金融包摂の促進」です。
銀行口座を持てない人々にも
スマートフォンさえあれば
通貨アクセスが可能となり、
経済活動への参加ハードルが下がります。
第三に「現金の代替としての機能」です。
流通コストの削減、偽造防止、
保管や輸送の安全性向上が期待されます。
第四に「マクロ経済政策の精度向上」です。
CBDCによって個人単位の消費傾向や
金融行動が詳細に把握できるため、
ターゲット型の給付や経済調整が
技術的に可能になります。
一方、CBDCには看過できない
デメリットも存在します。
最大の懸念は「プライバシーの喪失」です。
中央管理型である以上、
誰がいつどこで何にいくら使ったかを
国家が把握できる構造が生まれます。
これは技術的には監視社会への道を
開くリスクでもあります。
また、「銀行業の機能低下」も
現実的な懸念です。
CBDCの導入によって、
預金が中央銀行へ流れれば、
民間銀行の信用創造機能が低下し、
貸出や経済活動の鈍化を招く可能性があります。
さらに、政府の恣意的な口座凍結や
マイナス金利導入など、
CBDCの強制力が個人の経済的自由を
制限する可能性も否定できません。
CBDCとは単なる通貨技術ではなく、
金融構造、個人情報、
政治権力の在り方そのものを問う存在です。
その是非を語るには、
利便性やコストだけでなく、
「自由と統制」「透明性とプライバシー」
のバランスを見極める視点が欠かせません。
デジタルの力を使って何を得るのか。
そして何を失うのか。
CBDCという選択は、
その問いへの姿勢を明確にする
鏡でもあります。